遺産分割について
遺産分割はいつまでにしなければならないという決まりはありません。
とはいえ、いつまでも引き伸ばしておくと、後々困ることが多くなってしまいます。
例えば、相続税申告が必要な場合、相続税の申告期限は相続開始後10ヵ月 となっています。10ヶ月以内にしないと、延滞税を払わなければいけなくなります。遺産分割には期限は決められていませんが、できるだけ早く済ましておく ことをお勧めします。
遺産分割はまず相続人全員で話し合い(協議)ます。
もしそこで話がまとまらなければ、「調停」になります。調停は第三者的な立場にある家庭裁判所という 公的機関を間に入れて話し合いを進めることですが、あくまでも話し合いです。
この調停でも全員の合意が得られないときは、「審判」になります。審判は相続 人同士で話し合いが行われることはなく、家庭裁判所の家事審判官(裁判官)が各人の主張や年齢、職業、生活状況など一切の事情を考慮して公平な審判を下す ことになり、合意できない場合でもこれに従わなければなりません。
調停の成立や審判が下ってしまうと、くつがえることは原則ありませんので、後悔しないよう主張・証明すべきことは十分しておく必要があります。
■遺産分割の方法
遺産分割には現物分割、代償分割、換価分割と大きく3つの方法があります。
現物分割とは
1つ1つの財産を誰が取得するのか決める方法です。
例えば、父、母、息子、娘といった4人家族の場合、父が亡くなったとする と、相続人は母、息子、娘になります。
現物分割で、住んでいた家とその土地は母が、預貯金は息子が、別荘の土地と家は娘といったように分けることです。
現物分割は遺産分割で一番多い分け方ですが、不公平感が出てしまうため、現物を相続する代わりに金銭などを与える(代償分割)という方法をとることになります。
代償分割とは
特定の相続人が、特定の財産(現物)を相続する代わりに、他の相続人に金銭などを与える方法です。
例えば先ほどの家族の父が 会社の社長で、息子に会社を継いでもらう場合に、息子に会社の資産(遺産)の株式や店舗(土地・建物)を相続させ、その代わりに母、娘に代償金を支払うと いうことになります。
換価分割とは
換価分割とは、遺産を売却してお金に換えた上で、その金銭を分ける方法です。
例えば、相続財産が家と土地しかない場合、現物分 割すると、それぞれで持っていても価値が低くなってしまいます。このような場合に、その家と土地を現金に換えて、それを分割するという方法をとることがで きます。
■遺産分割協議書について
遺産分割協議とは、遺産を個々の財産に分けるための話し合い(協議)のことです。
遺産分割協議書とは、この協議の内容を記載した正式な文書です。
遺産分割協議書が作成されると、銀行から被相続人の預貯金を引き出せたり、各種の名義変更をスムーズに進めることが可能となります。
遺産分割協議書の注意点
①法定相続人全員で協議する
遺産分割協議書が完成したあとでも、一人でも相続人が欠けていた場合は遺産分割協議をやり直す必要があります。戸籍調査の上、間違いの無いように注意してください。
※現実的には全員がひとつの場に集まって話し合いをするということが難しいため、1通の遺産分割協議書(案)を作成し、他の相続人に、この内容でよければ実印を押してもらう方法がよく取られます。
②法定相続人全員が、署名・実印の押印をする
印鑑は実印を使わないと、不動産登記や銀行手続が出来ません。
③財産の表示方法に注意
不動産の場合は登記簿どおりの表記にしてください。銀行等は、支店名・口座番号まで書いてください。
④割印が必要
遺産分割協議書が用紙数枚にわたる場合は、法定相続人全員の実印で契印(割り印)が必要です。
⑤印鑑証明書の添付
遺産分割協議書に押した実印の印鑑証明書が必要です。
遺産分割は相続人それぞれにさまざまな思いがありますので、円満にまとめるのはなかなか難しいものです。トラブルになってしまうことも少なくありません。 「遺産分割でもめてしまっている」「話がまとまらない」「長男の取り分だけが多い」「自分の取り分に納得いかない」このような場合は弁護士にご相談くださ い。
代表弁護士 竹田卓弘
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