法律コラム (H27,11)
労働事件における裁判所の手続としては、主として保全、労働審判、訴訟があります。その中でも、労働審判制度は平成18年に開始した比較的新しい制度です。この制度が始まるまでの労働関係事件は、全国で年3000件前後でしたが、制度開始以降は年々増え続け、現在は5000件を超えるほどの急激な伸びを見せています。増加の原因は、やはり労働審判の利用ではないでしょうか。
今号では、労働審判がどのようなものかご紹介いたします。
労働審判制度の特徴
①個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する個別紛争が対象
事業主との間に生じた紛争である必要があるため、会社代表者や上司等の個人責任の追及はできません。
②原則3回以内の期日で終結。
通常の訴訟と比べると遙かに早く終結します。言い換えれば、3回の期日で判断できない複雑な紛争の場合、労働審判事件としては終了となり、通常訴訟へ移行します。
また、実質的な審理は初期の段階(1回目ないし2回目の期日)で済まされますので、当事者双方には第1回目の期日から周到な準備(主張、証拠)が求められます。特に、名古屋地方裁判所では第1回目の期日で審理を済ませる運用がなされています。
③裁判官だけでなく、素人裁判官も手続に参加する。
労働審判手続は、労働審判官(裁判官1名)と労働審判員(労働関係に関する専門家で、労働者側・使用側1名ずつ)の3名で構成される労働審判委員会によって行われます。通常の民事裁判は裁判官のみが審理・判断します。
④下された審判の効力は裁判の和解と同じ
審判の内容に対して2週間以内に異議申立が無ければ確定します。これにより強制執行が可能となります。
労働審判の流れ
申立
↓
第1回目期日 ※原則申立日から40日以内
↓
第2回目期日
↓
第3回目期日
↓
労働審判 → 異議申立あり → 訴訟へ移行
↓
異議申立なし
↓
紛争解決
代表弁護士 竹田卓弘
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