たけだより法律コラム(H29,3・4月号)
Q.我が社では、新たに就業規則において、兼業を禁止する規定を設けたいと考えています。しかし、社内からは、就業時間外は、本来、社員が自由に使える時間だから、日に2、3時間のアルバイトを認めてもよいのではないかという意見が出ています。会社としては、従業員の健康保持や従業員が仕事に集中できなくなるなどの不安から、アルバイトを含め、全面的に兼業禁止にしたいと考えていますが、そのような兼業禁止規定を新たに設けることは問題でしょうか。また、規定に違反した従業員を懲戒解雇することは可能でしょうか。
【A】
1 兼業禁止規定の新設は労働条件の不利益変更となる
兼業禁止規定は、労働者に兼業の禁止という新たな義務を負わせるものであり、労働条件の不利益変更にあたります。労働契約法上、就業規則で労働条件を不利益に変更するには、①就業規則の変更が合理的であること、②労働者に周知させたことが必要となります(労働契約法10条)。
2 変更の合理性の判断基準
就業規則の不利益変更に合理性が認められるかどうかは、変更の必要性や内容の相当性とその変更によって被る労働者の不利益との比較で判断されます。
3 変更の合理性は認められる可能性が高い
本件で兼業禁止規定を置く趣旨が、従業員の健康保持や従業員が仕事に集中できなくなるのを防止するためということであれば、変更の必要性は認められます。
また、国が長時間労働の規制に力を入れている現状などからすると、労働者の健康を守ることや仕事に集中してもらうという目的で、兼業を一律禁止することもある程度の相当性が認められると考えられます。
一方、労働者が被る不利益は、本来労働者が自由に使えるはずの時間を規制されるということですが、正社員が副業をすることは一般的に多くない現状を考慮すると、不利益の程度はさほど大きくないと考えられます。
4 質問への回答
よって、兼業禁止規定の合理性は認められ、労働者への周知を行えば、当該規定の新設も可能と考えられます。ただし、規定に反した者を一律に懲戒解雇とすることは、懲戒権の濫用として無効となる可能性が高く、注意が必要です。
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代表弁護士 竹田卓弘
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