法律コラム (H28,4)
新年度を迎え、新たな人材を確保されたい事業者様もいらっしゃるのではないでしょうか。今回の法律コラムでは、従業員の採用について触れさせて頂きます。
【Q1】採用募集の際に応募者から提出された履歴書の保管期間と廃棄方法に法的な取り決めはありますか。
【A】
履歴書の保管期間
履歴書は、人を雇い入れる際の参考資料として一般的に用いられています。
労働基準法109条に、「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない」とあります。しかし、採用の参考資料として使用される履歴書のような書類は、労働基準法109条にある「雇入」に関する書類の対象とはならないと考えられています。従って、履歴書の保管期間について法的な取り決めはありません。
- 採用活動終了後における履歴書の取り扱い
履歴書の取り扱いについては、職業安定法5条の4に「業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、目的の範囲内で保管・使用しなければならない」とあります。とういうことは、採用活動が終われば個人情報(履歴書)の利用目的が達成されたことになりますから、特に事情が無い限り履歴書は本人に返却するか破棄するべきでしょう。
【Q2】採用予定者が行方不明になり長期間連絡が取れなくなった場合、「内定辞退の意思表示があった」とみなすことはできるか。
【A】
- 内定とは ※新卒採用の場合
「内定」とはどのようなものなのか、法律で具体的に決められている訳ではありませんが、判例においては、「内定」は「始期付解約権留保付労働契約」が成立していると解されています。詳しく言いますと、労働契約の効力発生の時期(始期)は実際に働き始める日、しかし勤務開始日(通常は4月1日)までに学生が卒業できなかった場合などには解約できる(解約権留保)ことを条件とした労働契約ということです。
- 内定辞退の意思表示
労働者には解約の自由がありますので(民法627条)、内定者が内定(始期付解約権留保付労働契約)を辞退(解約)することは可能です。しかし、そのためには本人の意思表示が必要になりますが、「連絡が取れない」ことが内定辞退の黙示の意思表示なのか判断が困難であります。(事件や事故に巻き込まれて連絡が取れない可能性もあります。)従って、「連絡が取れない」=「内定辞退」とみることは難しいと言えます。
- 内定取消事由
「内定」の場合、通常、採用通知や学生が提出する誓約書に「内定取消事由」が列挙されています。そして、その中に「その他入社後の勤務に不適当と認められるとき」というような包括的な規定があれば、長期間連絡が取れないことは内定取消事由に該当し得ると言えます。
- 内定取消事由該当なら内定取消可能か
「内定」は「始期付解約権留保付労働契約」と考えられますので、通常の労働契約のように、解雇権乱用規定(Vol.29ご参照)の適用を受けます。従って、内定取消事由が「客観的に合理的な事由を欠き、社会通念上相当であると認められない」場合は、内定取消は無効であると判断されます。
このケースはどうなのでしょう。「内定者と連絡が取れない」ことについて、会社側はどのような策を講じたのでしょうか。会社が、両親への聞き取り、本人宅への訪問、学校への問い合わせなど、内定者と連絡を取るため、考え得る全ての手段を講じても、なお連絡が取れないのであれば、内定を取り消すことに「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められ」、内定取消は有効と判断される可能性は高いと考えます。
5.内定取消の意思表示
内定者と連絡が取れない状態であっても、内定取消の意思表示はしなければなりません。相手方の所在が不明である事件の場合には、「公示による意思表示」という裁判上の手続きがありまして、その手続きを執る必要があります。

代表弁護士 竹田卓弘

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