たけだより法律コラム(H28,11・12月号)

Q.最近仕事をしながら携帯電話やスマートフォンを使用している社員を多く見掛けます。上司が見とがめて注意すると、多くが「きちんと仕事はこなしているのだから、大目に見てほしい」「子どもからの連絡が頻繁にあるので、常時チェックしておきたい」として聞き入れません。確かに現時点で業務上の支障は出ていないようですが、看過してよいものとも思えません。就業時間中の携帯端末等の操作・閲覧をやめるよう強く指導し、またはそもそも禁止することは問題でしょうか。

【A】

1 労働者には職務専念義務がある

 労働者は、労働契約の最も基本的な義務として、使用者の指揮命令に服しつつ、職務を誠実に遂行すべき義務を有しています(職務専念義務)。
したがって、労働時間中は職務に専念し、他の私的活動を差し控える義務を有しています。

2 職務専念義務の内容

 職務専念義務が要求する注意義務の程度について、判例や学説で争いがあります。判例は、職務専念義務を規定した就業規則の規定を、職員は「勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い、職務にのみ従事しなければならない」との意であるとするなど、厳格な注意義務を要求しています。

3 携帯端末の使用は職務専念義務違反となる可能性

 最高裁の考え方によると、仕事中に私物の携帯端末を使用することは、現実に業務に支障が出たかにかかわらず、職務専念義務違反となると考えられます。したがって、就業規則に明記して就業時間中の使用を禁止することも差し支えありません。

4 人事権の濫用とならないように

 一方で、人事権の行使は権利の濫用となってはならず(労契法3条5項)、懲戒処分を行う場合も懲戒権濫用法理(同法15条)によって規律されます。つまり、処分に値するほどの非違行為でなければなりません。

5 お尋ねのケースについて

 お尋ねのケースはいずれも職務専念義務違反となりますが、どのように人事権を行使するかは慎重に考えます。
 一つ目の「大目に見てほしい」は、労働者に酌むべき事情はないため、やめるように注意をし、それでもやめなければ、譴責(始末書の提出を求めること)くらいはしてもよいでしょう。
 二つ目の「子どもからの連絡が頻繁にある」というのは、「頻繁に」連絡をさせる理由を聞き、例えば、前日に自宅近所で治安を脅かすような事案が起きたなど、連絡を取り合う必要性があるなら、それこそ大目に見て何もせず、「事態が落ち着いたら、そういうことはやめてください」と注意するにとどめればよいでしょう。

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代表弁護士 竹田卓弘

代表弁護士 竹田卓弘

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