法律コラム (H27,4)
一昔前までは、労働者と使用者の関係というと、使用者の方が、はるかに立場が強かったかと思います。しかし、最近の傾向は違いまして、裁判所における労働紛争の件数は増えていますし、当事務所も使用者の不法行為を訴えたい労働者、もしくは、労働者に訴えられた使用者からのご相談やご依頼の数は少なくありません。労使の関係性は、「労働者<使用者」から、徐々に「労働者=使用者」になりつつあるのでしょうか。
労働紛争の解決、もしくは、未然の防止に私どもがお役に立てましたら幸いです。
Q.仕事に真面目に取り組まず、ときどき欠勤もする社員(期間の定めのない契約)を解雇するにはどうしたらいいか。
A.解雇の種類として、普通解雇と懲戒解雇がありますが、普通解雇か懲戒解雇かというのは、多くの就業規則で規定されている解雇事由による区別です。法律上の解雇は、解雇予告(*前号参照*)をしてなされる解雇(予告解雇)か、解雇予告をせずになされる解雇(即時解雇)のどちらかです。
即時解雇をする為には、解雇事由が「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」または「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に当たり、労働基準監督署長の認定が必要です。また、即時解雇は解雇予告をされない訳ですから、労働者にとっては急に生活の糧を奪われることになります。そういう意味で、裁判となった場合は、即時解雇としての相当性を厳しくチェックされることになります。
では、即時解雇ではなく予告解雇なら、どのような場合でも可能かというとそうではありません。解雇権濫用規定というのがありまして、解雇事由が「客観的に合理的な理由」として認められ、解雇することが「社会通念上相当」として認められない場合は、解雇権濫用とされ、その解雇は無効となります。
さらに、一般的には、普通解雇と言うと、解雇予告をして退職金も支払い、懲戒解雇と言うと解雇予告なし、つまり即時解雇ができ、退職金も支払わなくていいと解されていますが、普通解雇(予告解雇、退職金あり)も懲戒解雇(即時解雇、退職金なし)も、それらを行うには、どのような場合が普通解雇もしくは懲戒解雇に当たるのか、あらかじめ就業規則と退職金規定に定められていなければなりません。
今回の問題ですが、詳しい事情にもよりますけれども、即時解雇として認められる「労働者の責に帰すべき事由」にまでは相当しないといえます。しかし、「仕事に真面目に取り組まず、ときどき欠勤もする」規律違反行為があるということで、「客観的に合理的な理由」がありますので、予告解雇であれば妥当ではないかと考えます。
解雇の問題が裁判になりますと、裁判所は個別的事案を裁判所の基準に照らして判断します。また、その基準は判例(過去の裁判での裁判所の判断)などにより変わってきます。実際に解雇の問題が起きてしまったら、対応される前に是非一度ご相談ください。
次回は実際にあった事件で解雇が認められた例と認められなかった例をご紹介します。
代表弁護士 竹田卓弘
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